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エステック株式会社(島根県松江市)

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エステック株式会社
(島根県松江市)

野津さん エステック株式会社は、1991年に創業した産業機械メーカーである。顧客の要望に合わせ、機械設計、電気設計、組立など各分野の担当者が連携して、オーダーメイドの機械を製作している。
従業員数は、35名(2026年7月現在)。女性従業員も多く、機械設計、企画、営業などの分野で活躍している。
今回は、取締役の野津淳子さんにお話を伺った。

創業時から続く独自の文化を健康経営の視点で再評価し、働きやすい環境づくりを進めている。

まずは、健康経営に取組み始めた経緯などについてお話を伺った。

以前から行ってきた取組みを、健康経営の視点で見直しました 「当社には『世にないものを創り出す』といった経営理念があります。創業者である会長は、新しい取組みを以前から積極的に進めてきました。社屋内への運動器具の設置や独自の自己投資手当、社屋全体を使ったイルミネーション制作活動などがその代表例です。」

「2003年の新社屋完成以来、冬になると従業員が6〜10人のチームに分かれ、社屋全体を使ったイルミネーションを勤務時間中に制作しています。従業員でテーマを決め、チームごとに予算を使い飾り付けを考えます。夜になると暗い周辺地域への貢献の意味もありますが、普段は同じ部署で働いていない従業員同士が話し合い準備を進めるため、社内のコミュニケーション活性化に大きくつながっています。オーダーメイド機械の製作では複数の専門担当者による連携が欠かせません。日頃から話しやすい関係を築く取組みは、業務上の連携にも活きています。」

セミナーへの参加を契機に、就業規則や働き方を見直しました 「このように、健康経営という言葉が注目される前から従業員の健康や交流につながる取組みを行っていました。それを改めて整理しようと考え、本格的に進め始めたのは2023年頃からです。私(野津さん)が“中小企業大学校”にて健康経営に関するセミナーへ参加し、まずは就業規則を整えたいと考え、完全週休2日制への移行など制度面から環境づくりを進めました。」

「その後、保険会社から“健康経営優良法人”認定制度について説明を受け、健康習慣アンケートや健康セミナーなどを導入しました。ただ、一度目の申請は『まだ十分なレベルではない』と判断し見送りました。認定を取るだけでなく、従業員にとって意味のある取組みにしたいと考えたからです。見直しを進めた上で、翌2024年に無事“健康経営優良法人(中小規模法人)”の認定を受けました。」

オーダーメイド機械製作に伴う精神的負担を軽減するため、AI技術や遠隔支援を積極的に導入し、残業削減と効率化を実現している。

次に、業務に伴う精神的負担を軽減する取組みについてお話を伺った。

健康経営の中心は、業務負荷を軽くする職場づくりだと考えています 「運動機器や健康セミナーなどの導入も大切ですが、それだけでは限界があります。最も大切なのは、過度なストレスを抱えず、従業員にとって『働きやすく、働きがいのある職場』にするという本質的な視点だと考えています。」

「当社の機械は、顧客の要望に合わせた一品一様の製品です。他社では作れない機械を作るのが強みですが、数千万円から数億円規模になることもあり、前例のない機械を設計・製造する担当者には大きな責任と精神的負担がかかります。トラブル時に原因の特定が難しく調整が長引くこともあり、業務負荷は決して小さくありません。業務を担う従業員の負担を少しでも軽くしたいと常に考えています。」

AIを使い、設計業務や資料作成の効率化を進めています 「解決策の一つとして、AIやデジタル技術を積極的に取り入れ、設計業務や事務作業の効率化を進めています。私から従業員に困っている作業を聞き、AIで対応できる方法があればすぐ提案しています。電気設計ではコード作成の負担を軽くしたり、事務部門では資料作成に活用したりしています。以前より業務量が大幅に減った作業もあり、従業員には非常に好評です。現在は過去の資料を整理し、AIを活用しやすい環境を整える計画も進めています。これらは直接的な健康施策には見えないかもしれませんが、業務が効率化され短い時間で働けるようになれば、従業員の精神的負担の軽減につながると考えています。こうした業務改善も立派な“健康経営の一環”だと捉えています。」

遠隔支援できる機器により、出張や移動の負担を減らすことにつながりました 「また、納入先で不具合や調整が必要になった場合、これまでは担当者が現地まで出向く必要がありました。様々な従業員から話を聞く中で、最近になって、遠隔支援に使える機器を知り、早速導入しました。自社や別の現場にいながら、納入先の機械の状況を確認できれば、長距離の移動や宿泊が減り、労働時間の削減につながっています。」

「当社の仕事は、機械設計や電気設計など複数の担当者が連携して製作します。案件が重なると設計担当者に大きな負荷がかかるため、早い段階で必要な情報を共有して作業が重ならないよう計画を立てたり、遠隔支援機器を導入したりすることで、業務の平準化を図り、時間外労働をできるだけ抑えるよう取り組んでいます。」

日常的な声掛けや自己投資手当、社外相談窓口の活用により、心身の健康と成長を支える職場を構築している。

最後に、メンタルヘルス対策や健康づくりについてお話を伺った。

定期的な面談だけでなく、日常の困りごとや相談にも耳を傾けています。 「メンタルヘルス対策として、当社では年1回、経営者が全従業員と個人面談を行っています。今困っている点も聞き、会社として対応できるものは役員会へ挙げて改善する流れができています。面談時以外にも、日常的に私(野津さん)から積極的に話しかけ、話を聴くように心がけています。すぐ対応できない内容でも、話すことで少しでもスッキリしてもらえればと思っています。また、新たに入社した従業員には、入社1か月後と試用期間が終わる3か月前後に面談を行い、適応状況や先輩との関係を確認しています。」

従業員が無料で利用できる外部相談窓口も案内しています 「当社では、会社が加入している保険の付帯サービスとして、従業員皆が利用できる“社外カウンセリング窓口”があります。心身の不調を抱えた従業員に私から案内したこともあり、『聞いてもらってよかった』と報告をくれた従業員もいました。私は専門家ではないので、不調に関しては社外窓口や医療機関など、相談できる外部機関を複数確保し、その情報を従業員に周知することが大事だと考えています。メンタルヘルス不調の際には、本人に同意を得た上で私からご家族とお話したこともあります。家庭側の理解を得ながら見守り、現在も勤務を続けている従業員もいます。」

毎朝の顔色を見て、気になる従業員には声をかけます 「健康経営の取組み開始にあわせて、毎朝の全体朝礼後にラジオ体操をはじめました。朝から体を動かすと頭がすっきりしますし、従業員が一堂に集まるため、普段と違う様子がないか確認できる機会にもなっています。暗い表情の従業員がいれば、特に用事がなくても私(野津さん)から近くへ行き、体調確認の声がけをしています。」

自己投資手当で、学びや健康づくりを支援しています 「当社独自の制度に“自己投資手当”があります。入社2年目以降の従業員が、年間28,800円以上を自分の成長や健康、リフレッシュのために使うことができ、申請が認められると翌年度から毎月手当として支給しています。セミナーや本の購入だけでなく、マラソン大会の参加費、フィットネスクラブの費用、映画鑑賞などの余暇活動を含め、本人の成長や健康、リフレッシュにつながる幅広い活動を対象としています。従業員が自ら学び方や健康づくりを考える制度として、10年以上前から続けています。」

心と時間のゆとりを持ち、生産性を上げて皆でしっかり稼ぐ持続可能な健康経営の実現を目指しています 「こうした取り組みの背景にあるのは、創業者が常々話している『しっかり儲けて、高い給料を還元したい』という思いです。私も役員として全く同じ気持ちであり、従業員の日々の頑張りにはしっかりと報酬で報いたいと心から思っています。ただし、無理をして長時間働いたり、一部の人に負担が偏ったりするような働き方では、心も体も持続しません。私たちが目指すメンタルヘルス対策を含めた健康経営の本質は、単に相談窓口を増やすことや制度を整えることではなく、『従業員が過重な精神的負担や焦りから解放され、安心して前向きに力を発揮できる土台をつくること』だと考えています。」

「私たちがAIを進める目的は、単なるコスト削減ではありません。煩雑な作業や無駄な時間をAIに任せることで、従業員に『心と時間のゆとり』を作り出し、精神的なオーバーワークを防ぐとともに、より付加価値の高い仕事や新しい挑戦に集中してもらうためです。」

「一人ひとりが誇りと責任、そして仲間を思いやる“心根”を持って価値を生み出し、会社がより一層儲かり、その成果が皆さんの給料としてしっかり還元される。“効率化して負担を減らす(メンタルヘルスを守る)”だけで終わるのではなく、“生産性を上げてみんなでしっかり稼ぎ、豊かになる”。この持続可能な好循環を創り出すことこそが、私たちが目指す健康経営の本質だと捉えています。」

【取材協力】エステック株式会社
(2026年10月掲載)